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仲間がいればもっと高みを目指せる。元同僚とデザインチームを立ち上げた話 #わたしのスキル解放記

自分が当たり前のようにやってきたことが、別の誰かから見ると大きな価値になることがあります。

「#わたしのスキル解放記」では、自身の持つスキルに気づき、それをバネに人生の次のステージへとジャンプした人々の物語を紹介していきます。

今回お話を伺ったのは、男女二人で活動するデザインチーム「mavshine(マブシャイン)」の代表・杉山浩之さん。「マブダチ」ならぬ「マブ社員」という言葉の通り、もともと同じデザイン会社で働いていた同僚同士で2019年に立ち上げました。デザインだけでなく、企画やブランディングからサポートできるのが、mavshineの強みです。

今では法人として活動する二人ですが、会社設立のきっかけとなったのがココナラでした。

「独立は大変なこともたくさんありました。僕一人だったら早々に挫折していたかもしれませんが、チームだから頑張れたんだと思います」

そう話す杉山さんに、mavshineを立ち上げた経緯や、軌道に乗るまでどんな試行錯誤をしてきたのかを伺いました。

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「本気で頑張る」経験を求め、家電量販店の営業職に

「学生時代の僕は、本当にだらしなくて。ほとんど学校に通わずに遊び呆けていました。将来の夢なんかもちろんなくて、家族に公務員が多いからという理由で、高校卒業後は公務員受験の専門学校に入ったんです」

将来の夢もなく、流されるままに学生時代を過ごしたという杉山さん。生き方が大きく変わったのは、“なんとなく”入学した専門学校で恩師と呼べる先生に出会ったのがきっかけでした。

「厳しい先生だったけれど、本気で僕の将来を考えてくれる人でした。やる気のなかった僕にも、いつも真剣に向き合ってくれて。その先生を見て、僕も本気で何かに向き合ってみたい、と思うようになったんです」

自分が本気で向き合いたいことってなんだろう? 初めて「やりたいこと」を探し始めた杉山さんは、あるとき街中に掲げられた広告を見て「かっこいいな」と思う自分に気づきます。

デザイナーを目指してみようか。そう考え、次にとった行動は、なぜか「大手家電量販店への就職」でした。

「デザインに興味はあるものの、当時の僕はスキルも経験も全くありません。まずはデザインの勉強をするためにお金を貯めようと思ったんです。あとは、これまでだらしない生活を送ってきた分、厳しい環境に身を置いてみたくて。本気で頑張ったらどれだけ結果が出せるのか、挑戦してみたくなったんです。

『厳しい環境でも頑張った分だけお金がもらえる職場を教えてほしい』と恩師に頼んだところ、家電量販店の営業を勧められたので、アドバイスの通りに就職を決めました」

独学でデザインの世界へ。美大出身者と肩を並べるために磨いた強みとは

数字で評価される営業の仕事は、これまで経験したことのないシビアな世界でした。

しかしもともと人と話すことが好きだった杉山さんは、入社からわずか半年で県内営業成績1位を獲得し、スピード昇進。予想以上に早く勉強資金が貯まったため、早々に退職してデザイナーになるための勉強をスタートさせます。

「アルバイトをしながらPhotoshopやIllustratorの勉強をし、実務未経験でデザイン事務所に入社しました。家電量販店で1位を獲得したときのように『この事務所で誰よりも大きな成果を挙げられたら転職してステップアップしよう』と決めての就職でした」

とはいえ、周りは美大やデザイン専門学校出身の、スキルも経験もある人ばかり。何歩も遅れている自分が一番の成果を出すためには何をすべきか。そこで考えたのが、営業時代に培ったコミュニケーション力を活かすことでした。

「職人肌が多いデザイナーの世界で、コミュニケーション力は強い武器になると思ったんです。上司や同僚とも飲みに行くし、お客さまとの打ち合わせにも積極的に参加して仲良くなる。もちろん、同時並行でデザインのスキルも磨いていく。そうしているうちに『杉山君に頼みたい』と依頼されることが増えていきました」

「まだまだ杉山さんと一緒に働きたいです」

デザインスキルと丁寧なコミュニケーションを武器に着々と実績を上げ、キャリアアップしていった杉山さん。デザイナーとして邁進していく裏で、プライベートでは子どもにも恵まれます。

家族ができたことで「腰を据えて働こう」と考え、3度目の転職先で選んだのは、50年以上続く老舗のデザイン会社でした。杉山さんはそこでも順調に実績をあげ、デザインだけでなく経営にも関わるように。しかしキャリアの順調さとは裏腹に、葛藤を抱えるようになります。

「いざ経営に関わってみると『僕ならああしたい、こうしたい』という思いがどんどん湧き上がってきて。でも、自分の会社じゃないから思うようにはいきません。もどかしく感じ、『それなら自分で会社を作って経営すればいいんだ』と思うようになったんです」

当時の杉山さんは、デザインチームの責任者も任されていました。“マブダチ”のように仲の良いチームメンバーに、退職して起業する意向を伝えたところ、あるメンバーから「まだまだ杉山さんと一緒に働きたいので、私も退職します」と申し出が。それが、現在もmavshineで一緒に働くパートナーです。

課題は、新規クライアント開拓&テキストコミュニケーション力の向上

とはいえ、いきなり会社を辞めるのはチャレンジングでもあるため、二人はすぐには退職せず、まずは会社に在籍しながら独立に向け新規のクライアントを探し始めます。

「独立のけじめとして、会社のお客さまを引き継ぐことだけは絶対にしないと決めていました。では、どこでクライアントを探すか。そこで出会ったのが、ココナラだったんです」

新しいクライアントに出会える場所としてクラウドソーシングに注目した杉山さんたちは、スマートフォンとパソコンでの操作性にギャップがなく使いやすいことなどから、ココナラに的を絞って受注に向けた対策を進めることを決めました。

「ココナラがテキストコミュニケーション中心のプラットフォームであったことも決め手になりました。僕は電話や対面での会話は得意でも、テキストコミュニケーションには昔から苦手意識があって……。

どんどんオンライン化が進んでいる中、この短所を克服しないと、デザイナーとしての成長も閉ざされてしまうかもしれないと不安を感じ、テキストコミュニケーション力を鍛えたいと思っていたんです」

初出品からわずか10分で受注! そのカギは?

ココナラを活用して、独立後の足場をつくろう。そう決めた杉山さんとパートナーは、まずは競合分析をスタートしました。

ココナラで活躍しているデザイナーは、どんな人なのか。何を強みにして、どんな価格でどんなサービスを提供しているのか。お客さまとはどんなコミュニケーションをとっているのか。競合がたくさんいる中でmavshineを選んでもらうためには、何をアピールしていくべきか。時にはココナラの出品者に実際に発注もしながら、約1カ月かけて徹底的に調査と検証を行いました。

「登録している数百人のデザイナーを分析した結果、『デザインだけでなく、企画やブランディングから支援できること』『長年デザイン会社に勤めており、多種多様なデザインのスキルや経験があること』『男女二人のチームであること』が僕たちの強みだとわかりました。

特に3つ目は重視していましたね。ココナラは個人で活動している出品者が多いので、複数の視点からアイデアを提案できるチームでの活動は、他にはない大きな強みになるんじゃないかと思ったんです」

万全の準備を重ね、満を辞してロゴデザインの出品をスタートしてから、わずか10分で依頼が入りました。当時を振り返って「出品するまでの準備はとにかく大変だった」と話す杉山さん。それを乗り越えられた理由は「一人ではなく、チームだったから」だと言います。

「何百人もの競合を分析して、デザインサンプルを作って、さらにポートフォリオを作る作業は本当に大変で、僕一人では挫折していたかもしれません。この入念な下準備は、あうんの呼吸で一緒に頑張れるパートナーがいたからできたことだと思います」

「コミュニケーションが不快」お叱りを受け、反省と改善を繰り返す日々

順調なスタートを切ったmavshineですが、決して順風満帆な道だけを歩んできたわけではありません。

「ココナラで活動を始めてすぐの頃は、お客さまからお叱りを受けたこともありました。当時はリーズナブルな価格でサービスを提供していて、『この価格ならフランクな対応が好まれるだろう』と思い込んだ結果、お客さまから『コミュニケーションが馴れ馴れしくて不快だった』と評価を受けてしまったり……。

リーズナブルだから対応もそれ相応で良い、という訳では決してないんですよね。チームの課題が『コミュニケーション』だと気付いてからは、月に一度はお客さまからの評価を見直しながら、コミュニケーションの取り方を議論しました」

もともと、テキストコミュニケーションに苦手意識を持っていた杉山さん。テキストコミュニケーションが中心のココナラでお客さまとのやりとりを改善させていくのは、簡単なことではありませんでした。

「お客さまからフィードバックを受けるたびにチームで話し合って『専門用語を使わずに説明する』『お客さまがつまずきそうな場面は先回りして丁寧に解説する』など、少しずつ僕たちなりの“最適解”を見つけていったんです。

その甲斐あって、今ではコミュニケーション面でのトラブルはほぼありません。むしろ『丁寧な対応で安心した』とコメントをいただけることが多いんですよ」

仲間がいれば、もっと遠くまで行ける

努力が報われ、ココナラでの仕事が軌道に乗ったことから、杉山さんたちは会社を退職し、法人を設立。完全にmavshineの活動に軸足を移すことになりました。現在は主に法人向けにサービスを展開し、大手コンビニエンスストア、有名化粧品メーカーなどのデザインパートナーを務めています。

mavshineの事務所にて

「ココナラがきっかけで独立の決心ができたのは間違いありません。そして今でも僕たちが安定した販売実績と評価を得られているのは、ココナラを通じてさまざまな出品者の方と出会い、サービスを高め合ってこられたから。

最近では、出品者の交流イベントで仲良くなった人同士でお互いのサービスをアドバイスし合ったりもしているんですよ。これまでもチームだったからいろんな壁を乗り越えてこられたし、今はそれ以上に仲間の輪が広がって、挑戦したいこともどんどん増えています」

最近では、ココナラで仕事を受注するコツなどをブログや記事にまとめ、情報発信もしている杉山さん。「テキストコミュニケーションへの苦手意識はなくなってきたけど、書くことが得意なわけではない」と語る彼がブログを書く理由は、「これまで助けてくれたたくさんの仲間への恩返しがしたいから」。

スキルを磨くことは一人でもできますが、そのスキルを評価し合い高めていくためには、ビジネスパートナーや同じ志を持つ仲間の存在が欠かせません。

自分の持つ知見を惜しみなくシェアし、その輪を広げていくことで、一人の力では到達できないような成果を出すことができるのかもしれません。

取材・文:仲奈々