見出し画像

一度は諦めた音楽の道。寄り道したからこそ「私だからできる仕事」が見つかった #わたしのスキル解放記

自分が当たり前のようにやってきたことが、別の誰かから見ると大きな価値になることがあります。

「#わたしのスキル解放記」では、自身の持つスキルに気づき、それをバネに人生の次のステージへとジャンプした人々の物語を紹介していきます。

今回お話を伺ったのは、ココナラで伴奏音源制作など音楽系のサービスを出品しているemiglia(エミリア)さんです。実は過去に「音楽を仕事にすること」を諦めた経験があると話す彼女。どんな思いで、どう方向転換し、ココナラにたどり着いたのか。ココナラでは、どんなサービスを出品しているのか。詳しく伺いました。

***

emigliaさんはココナラで、音楽系やライティング系のサービスを出品しています。

「音楽系だとピアノ伴奏音源を録音してデータで納品する伴奏音源の作成、伴奏楽譜制作、作曲や編曲といったサービスを提供しています。その他にも得意なライティングを活かして、ショートストーリーや記事コンテンツ作成といったサービスも出品しているんですよ」

ピアノ歴は30年以上。大学では声楽を専攻し、卒業後は大手音楽教室でピアノ講師を1年務めた後、青年海外協力隊として行ったウズベキスタンで音楽教師の仕事に従事しました。豊富な音楽の知識と経験を活かし、ココナラでは「音楽・ナレーション」カテゴリで販売実績700件以上、平均評価は最高の5.0を誇っています(※)。

しかし、ウズベキスタンから日本に帰国してしばらくは「音楽は、仕事じゃなく趣味にしよう」と音楽の道を離れていた時期があるそうです。

※2023年12月現在

激務の音楽の先生になるか、収入の不安定な音楽家になるか。私は、どちらも選べなかった

「ピアノを始めたのは、3歳のとき。両親はピアノ以外にも、たくさんの習い事の体験会に連れて行ってくれました。その中で興味を持った習い事を始め、塾や部活で辞めていく中で最後まで残ったのがピアノでした」


幼い頃、音楽の魅力に取り憑かれたemigliaさん。ピアノを習う傍ら、中学校では合唱部と弦楽合奏部を兼部し、高校では室内楽部で活動していました。

「音楽を仕事にしたい。そのために、大学で音楽の勉強をしたい」

そう思うのは自然な流れでした。その後、無事に音楽科のある大学に進学。大学2年生のときにボランティアでカンボジアを訪れたことをきっかけに、「途上国の音楽教育に携わりたい」と思うように。音楽指導の実務経験を積むため、大学卒業後は音楽教室でピアノ講師を務め、その後青年海外協力隊としてウズベキスタンに赴任。現地の小中一貫校で、音楽の先生として約2年間活動しました。

ここまで順調に歩んできた「音楽畑」のキャリア。しかし、青年海外協力隊の任期を終えて日本に戻ってきた彼女は、音楽とは全く関係のないWeb制作会社の営業事務に転職したのです。

「音楽の先生の仕事は、とても楽しかったし充実していました。日本でも教員になろうか考えたのですが、教員の働き方が自分に合っているか考えてしまって……。

少しずつ改善されてきていると思いますが、当時の教員は休日出勤も残業も多く、趣味や家族との時間を後回しにしている先生たちの様子を見て『私はそこまで頑張れない』と思ってしまったんです。

音楽を仕事にしたいなら、もちろん先生になる以外の方法もあります。でも、とても狹き門だったり、収入が安定しなかったりすることがほとんどです。その状態で結婚したら? 子どもが生まれたら? そう考えると、音楽で生きていく自信は持てませんでした」

「今後音楽は、趣味として楽しもう」。そう心に決め、emigliaさんはIT業界で働き始めました。知らない用語や初めて見るデジタルツールにとまどう毎日。しかし、土日は趣味のピアノに勤しんだり、社会人オーケストラに加入してビオラを弾いたりと、それなりに充実した日々を送っていました。その一方、SNSで旧友たちの活躍に複雑な感情を抱くことも。

「大学時代の友達や音楽教室講師時代の同僚が『ウィーンに音楽留学します』『ピアノのコンサートをします』と活躍しているのを見ると、胸のあたりを針で刺されたような『チクっ』とした痛みを感じるんです。

たしかに、趣味で音楽は続けていました。でも趣味だから、仕事に影響を与えるほど音楽に没頭しちゃいけない。趣味だから、家族団らんの時間に楽器を弾いて邪魔しちゃいけない。『仕事』という大義名分を失ってから、楽器に触れる時間がどんどん減っていきました。比例して、指も思い通りに動かなくなっていって……。自分で決めたこととはいえ、大好きな音楽を思うように楽しめない。それが辛かったですね」

音楽を諦めて寄り道した「事務職の経験」が、いつのまにか強みになっていた

では、再び音楽を仕事にするためにココナラを始めたのでしょうか? そうemigliaさんに問うと、「実はココナラとの出会いは音楽とは全く関係ない」のだそう。

「会社員をしながら、自分の得意を活かした副業をしてみたいと思って。学生時代に少し携わったことのあるライターの仕事をクラウドソーシングで検索したんです。その過程でココナラを見つけました」

クライアント側がほしいスキルや経験を提示し、それに合致する人が手を挙げる。その形式をとるクラウドソーシングが多い中、自分からできることを提案するスタイルのココナラを見て「おもしろい!」と思ったemigliaさん。同時に、「ここでなら、音楽のスキルも出品できるのでは……」と考えます。

「安定した会社員を辞める勇気はない。でも、音楽を仕事にすることを諦められない自分もいる。なら、会社員を続けながら、副業で音楽に携わればいいんじゃないか? ココナラでなら、それができるんじゃないか? 最初は、そんなちょっとした興味からスタートしました」

最初に出品したのは、『ピアノ伴奏を録音します』というサービス。当時「伴奏」を提供するサービスがほとんどなかったこと、またemigliaさん自身が趣味でピアノ弾き語りをしていたことから、「弾き語りをしたいけど、ピアノが弾けなくて困っている人がいるはずだ」と予想して生まれたサービスです。

「すでに完成された演奏音源や、カラオケ練習用の音源を提供しているサービスは当時からありました。そこに実績のない私が入っていくのは、いくら低価格でも難しいはず。だったら、『私だからできること』をサービスにしようと思ったんです。

それでも最初は勝手がわからず、一つの音源を作成するのに何時間もかかっていました。時給に換算すると、数百円なんてときも……。そこで役立ったのが、音楽の道を諦めて選んだ『事務のスキル』でした」

Web制作会社に転職したばかりの頃は、パソコンを使った資料作成やクライアントとのやりとりに苦労したことも。しかし、毎日のようにデジタルツールに触れてきたからこそ、「どうすればオンライン上でお客さまに音源や楽譜を共有できるのか」「どんなソフトを使えば効率よく音源制作ができるのか」、試行錯誤することができたといいます。

また、ココナラでの実績がゼロだったにも関わらず、初出品から約1週間という短期間で依頼が入ったのも「IT業界で働いた経験が活かされているのでは」とemiliaさんは考えています。

「小さい会社だったので、営業事務とWebマーケティングのアシスタントを兼任していたんです。そこで、Google AnalyticsやSEOといったWebマーケの基礎知識を学びました。

そのときの経験から、ココナラで出品するときも『どんなタイトルのサービスにしたら、多くの人の目に留まるだろう』『どんなキーワードを入れたら、Google検索したときに上位表示されるだろう』と無意識に手を動かしていたのかも」

一度「音楽畑」を離れたから、たくさんの選択肢ができた

「音楽で生きていくのは難しい」と、一度は別の道に進んだemigliaさん。でも、心の奥にはずっと、「音楽で生きていくこと」を諦めきれない気持ちがありました。ココナラと出会い、再び音楽が仕事になった今をどう思っているのでしょうか。

「現在、音楽だけで生計を立てているわけではありません。マーケティングの知識・経験を活かしたライティング、青年海外協力隊の活動で身につけたウズベク語の通訳、そして、音楽の3つの柱で活動しています。複数の柱があることで、収入も安定しやすいんですよ。

実はライティングと通訳に比べると、音楽の案件は多くはありません。でも、責任を伴う『仕事』だから、案件がないときでも自己研鑽し続けられる。毎日音楽と離れずにいられる。それが嬉しくてしょうがないんです。

音楽だけで生きている友人たちを見て、心が苦しくなったこともありました。でも、その友人たちに現在の私の仕事を話すと、『パソコンを使って仕事をしているなんて、すごいね!』と言ってくれるんです。

私もあのまま音楽の先生を続けていたら、『パソコンなんて難しくて無理!』と言って、ココナラとも出会っていなかったかもしれません。少し寄り道をしたことで、私だからできる音楽の仕事が見つけられたのだと思っています」

「音楽だけで生計を立てる」こと以外にも、音楽を仕事にする方法はたくさんある。一度音楽から離れたこと、そしてココナラとの出会いがemigliaさんの選択肢を広げました。

現在は、コンクールや受験に向けた練習用の伴奏音源の提供から、保育園で使うピアノ伴奏音源の提供、ミュージカル団体へのオリジナル曲の提供など、どんどん仕事の幅が広がっています。

「ありがたいことに、何度もリピートしてご依頼くださる方も多くて。長くやりとりをしている一人に、ミュージカル歌手を目指しているお子さんがいます。私が練習用の伴奏音源を納品したら、音源にあわせて歌っている映像を送ってくれる。その映像に対して私もコメントをしたり、ときには歌唱レッスンをしたりすることもありました。

そんなやりとりを続けていたら、先日その子から『コンクールで審査員特別賞を受賞した』と連絡がきたんです!

ココナラでは、お客さまとのやりとりはテキストコミュニケーションがメインです。でも、こうやって気持ちを伝えてくれる方がたくさんいる。それが大きなモチベーションになっています」

世の中には、一つのスキルを極めてまっすぐ歩き続ける人もいれば、寄り道をしながら前に進む人もいます。後者は、前者より歩みが遅く見えたり、ときにはゴールから遠ざかっているように見えて不安になることもあるでしょう。

でも、寄り道でしかできない経験もきっとある。寄り道して得たスキルと経験をかけあわせることで、emigliaさんのように「自分だからできる仕事」に辿りつけるのかもしれません。


取材・文:仲奈々

この記事が参加している募集

仕事について話そう

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!