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商社での多忙な日々と、オリンピックを目指した経験が、いまの血肉になっている #わたしのスキル解放記

自分が当たり前のようにやってきたことが、別の誰かから見ると大きな価値になることがあります。

「#わたしのスキル解放記」では、自身の持つスキルに気づき、それをバネに人生の次のステージへとジャンプした人々の物語を紹介していきます。

今回お話を伺ったのは、パーソナルトレーナーとして活動しているぽん太さん。プロ野球選手になれなかった経験、そしてオリンピックを目指すも出場を逃した経験を乗り越え、今はプレイヤーではなくサポート側としてトレーニングの楽しさ・喜びを伝えています。

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パーソナルトレーナーとして活躍中のぽん太さん。現在は、「雑司が谷・護国寺パーソナルジム PONTRAY」の経営と、オンライン上でのトレーニングやダイエットのサポート、そして豊島区から委託を受け、区民向けの運動指導も行っているひっぱりだこの人気トレーナーです。

子どもの頃から野球に打ち込むも、プロになる夢を諦めて大手商社に就職。東京オリンピックの開催が決まったことを機にふたたびスポーツへの情熱が蘇り、オリンピック出場を目指して働きながらアスリートとしても活動するなど、激動の20代・30代を過ごしてきました。

それらの経験が、トレーナーというキャリアにどのように繋がってきたのか。挑戦と挫折を経て「体が変わると心も変わり、人生が楽しくなる」という信念にたどりつくまでのお話を伺いました。

こういう人が、プロになるんだな……

スポーツにおいてのぽん太さんの原点は、小学2年生で始めた野球。地元の強豪チームに入団し、順調に実績を重ねていきます。チームメンバーの中では小柄だったものの、体格差のハンデを跳ね除ける努力で常時レギュラーのポジションを獲得。そして、甲子園を夢見て強豪校と呼ばれる高校に入学しますが……。

「甲子園出場を目指して練習していましたが、地方大会で敗戦してしまいました。一方、中学時代のチームメイトがいる野球部が、その年の甲子園優勝を飾って。悔しかったですね」

中学生のときは同じレベルで切磋琢磨していた仲間の活躍をテレビで目の当たりにして、「次は自分が日本一になりたい。プロの野球選手になりたい」と思うようになったぽん太さん。慶應義塾大学の野球部に入部し、プロの世界を目指して努力を重ねますが、そこでも再び壁にぶつかりました。

「当時、ライバルである早稲田大学の野球部に斎藤佑樹さんがいたんです。学年も一緒だったから、よく試合を見る機会がありました。技術があるのはもちろん、体格にも恵まれている。こういう人がプロになるんだなって思いました」

体が小さいことは、長年ぽん太さんの強いコンプレックスでした。自分は、プロにはなれないーー。そして夢を諦め、会社員として総合商社に就職したのでした。

「選手としてオリンピックの場に立ちたい」

夢を諦めてしばらくは、商社マンとして忙しい日々を過ごしていたぽん太さん。スポーツへの想いは日に日に薄れていきました。しかし、就職して約2年半が経った頃、ぽん太さんのキャリアを大きく変える出来事が訪れます。それは、2020年のオリンピックが東京で開催されるというニュースでした。

「そのニュースを見た瞬間『選手としてこの場に立ちたい』と思ったんです。チャレンジしないと、絶対に後悔するという確信がありました」

大学野球で挫折を経験し、スポーツで生きていくことは諦めたつもりだった。でも、心の底ではずっとチャンスを狙っていた。その想いが表出するきっかけとなったのが、東京オリンピックのニュースでした。

「オリンピックに出たいとは思ったものの、しばらく本格的なスポーツから離れていたから、どうしたらいいか悩んでいました。そんなとき、ちょうど“公務員ランナー”の川内優輝さんが活躍している番組を見たんです」

現在はプロランナーとして活躍する川内さんですが、当時は県庁に勤めるランナーとして注目を浴びていました。その姿を見て「仕事と両立しながら世界を目指せるのか」と衝撃を受けます。

「ちょうどその頃、商社で海外駐在の可能性が出てきていました。海外駐在すればオリンピック出場のチャンスはゼロになると思い、退職を決意しました」

ぽん太さんは仕事とスポーツを両立できるよう、激務の商社を退職し、大学職員へとキャリアチェンジ。いわゆる“エリート”としてのキャリアを手放すことにはまったく躊躇がなかったといいます。

「それよりも『オリンピックに出たい』という想いが圧倒的に強かった」とぽん太さん。後発組でもチャレンジしやすいトライアスロンのトレーニングから開始し、仕事の合間を縫って練習を積んでいきました。

開始当初は順調でしたが、次第に仕事と3種目(水泳、自転車、ランニング)のトレーニングを両立することに限界を感じるようになり、開催2年前には一番得意だった自転車競技に照準を絞りました。

仕事前後の時間をフルに使い、毎日ハードトレーニングを敢行。朝5時半から3時間自転車に乗り込み、そのまま出勤。退勤後も同様に自転車に乗り込み、1日130kmほど走っていたそうです。そして努力の甲斐もあり、ついに「オリンピックに手が届くかも」という手応えを感じられるところまで上り詰めます。

「努力が実り、オリンピック出場の選考を兼ねた全日本自転車競技選手権大会に出場できることになりました。上位になればオリンピックに出られるかもしれない、という重要な大会でしたが、負けてしまいました。同時に、オリンピック出場の可能性も絶たれましたね」

オリンピック出場の夢は叶わなかったぽん太さんでしたが、スポーツに対する思いは、また別の形で花開くことになります。

ジムのトレーナーにキャリアチェンジを考えた途端、コロナ禍に

2014年にオリンピック出場を決意してから5年間、ぽん太さんは夢に向かって走り続けてきました。出場は叶いませんでしたが、「得られたものは大きかった」と晴れやかな顔を見せます。

そう思えたのは「やりきった」という達成感からだけではなく、トレーニングを続ける中で新たな目標が芽生えていたからでもあります。

「『オリンピックへのチャレンジが終わったらトレーナーに転身しよう』と決めていたんです。運動のおかげで自分の人生は楽しくなったから、これまでの知識や経験を活かして、今度はトレーナーとして人の幸せのサポートをしていきたいと思いました」

アスリートとしてやりきったあと、サポート側としてトレーニングを続ける道を選んだぽん太さん。フィットネスジムでのアルバイトで経験を積もうと考えていたものの、ここでもまた新たな試練が訪れます。新型コロナウイルスの流行によって、フィットネスジムを取り巻く環境が大きく変わってしまったのです。

「どこのジムも営業時間を短縮したり、休業したりして……。アルバイトを探せるような状況ではなくなってしまいました。こんな状況でも何かできることはないかと模索していたとき、ココナラでオンライントレーニングを提供している人を見つけたんです」

パソコンやスマートフォンを活用したオンライン指導。これなら自分にもできるかもしれない。そう考えたぽん太さんは、運動不足を感じている人や体型が気になる人に向け、ココナラでオンライントレーニングを提供することに決めました。

かつての自分のような競技の世界で闘うアスリートではなく、あくまでも運動初心者や一般の人を対象にした背景は、会社員として働いていた頃の経験にありました。

「大学を卒業してしばらくはスポーツから離れていました。でも、仕事柄毎日のように飲み会や会食があるから、少しずつ体型が気になってきて……。そこで週2、3回程度ですが、会社に行く前にランニングをするようにしたんです。

当時は夜遅く帰ってきて朝早く仕事に行く生活をしていたから、続けられるか不安でした。でも、会社に行く前に運動をすることで、心も体もスッキリしたんですよね。そうすると、自然と仕事へのモチベーションも上がっていって。その経験から、体の健康だけじゃなく、心の健康を保つためにも運動は欠かせない、と思うようになりました」

多くのトレーナーが、専門学校や大学でトレーニングを学びキャリアを積んでいくなか、会社員として勤務経験のあるぽん太さんは異色の存在です。

しかしその経験こそが、トレーナーとして支持される理由にもなっていきました。

継続する難しさを知っているから、寄り添うことができる

「商社時代、接待が多く毎日のようにお酒を飲む生活の中で、どうにか工夫してトレーニングを続ける方法を試行錯誤していました。パーソナルトレーニングの受講者は、あの頃の自分のように普段は会社員をしている方が多いんです。僕は実体験をもってトレーニングを続ける難しさがわかるし、その上でどんな工夫ができるかも知っています」

健康や体型のためには、お酒や不規則な生活は止めたほうがいい。それはトレーニングの世界の常識ではありますが、実際には仕事柄完全に止めることは難しいという人がほとんどです。ぽん太さんはその現実を知っているからこそ「できることを少しずつやればいい」というスタンスをとり、それが強みとして評価されていると感じているそう。

「お酒を止めてバランスの良い食事をする、不規則な生活を止めて早寝早起きをする、毎日運動する……。健康のために『やった方がいい』とされていることはたくさんあります。でも、すべてをする必要はない。数分でも、数回でもいいから、できることを少しずつ継続することが大事なんです。

今何もしていないなら、少しでも何かをすれば変化は出るんですよ。そして、少し体に変化が表れたら、『もう少しがんばってみようかな?』とやる気も湧いてくる。まずは一日に5分だけ歩いてみるとかでもいいんです。今までできなかったことができると、そこから変わるチャンスはどんどん生まれますから」

野球少年だった頃、体格に悩んだときも、トレーニングをして自分の体が変わることで少しだけ自信が持てた。会社員時代、忙しい毎日の中で少しでも運動をすることで、仕事にも前向きに取り組めるようになった。運動を通じ、そういった“変化”を感じられることで、考え方もポジティブになっていく。その実体験が、ぽん太さんのトレーナーとしての信念を形作っているのです。

「身体を変えると心も変わり、人生が楽しくなる」

「何をやっても続かなかったのに、健康的な生活を習慣化できた」「体が軽くなって、なんだか元気もでるようになった」とポジティブな口コミで溢れているのも、ぽん太さんのサービスの特徴です。

「これまで運動をしてこなかった方ほど、始めたばかりの頃は成果が見えやすい。やればやるほど体も応えてくれるから、それが続けるモチベーションになります。でも、続けていくうちに停滞期が訪れるんですね。今までと同じことをしているのに、体重は変化しないし体型も変わらない。

ただ、見方を変えると、少しでも続けているからこそ体型を維持できているんです。ゼロに戻すと体型もすぐ戻ってしまうけど、イチでも続けていると、モチベーションがあがる瞬間は必ず来ます。その瞬間が訪れるまで、相手に寄り添ってサポートするのが僕の役目。そもそも『これまでしてこなかったことをしている』だけでも称賛に値すべきことなんですよ」

厳しく指導するのではなく、相手の状況に寄り添い、なにか一つでもできたことを評価する。その姿勢が、多くの人の心をつかんでいます。

スタートから約3年が経った現在、ココナラでのトレーニング販売件数は130件以上、そして5点満点中の4.9と、順調に評価を得ています。勇気を出してオンライントレーニングを始めたことで、自身のキャリアはもちろん、考え方・価値観にも新しい風が吹き込まれたといいます。

「私にとっての当たり前が、世の中では特技として扱われ、価値として捉えてもらえることに幸せを感じます。自身の知識や経験が困っている人の役に立ち、コンプレックスが払拭されるなら、こんなに嬉しいことはありません。

また、元々インターネットが苦手で顔が見えない人とのコミュニケーションは避けてきたのですが、ココナラ上で購入者の方と交流を重ねることによって、ネットもリアルも心を通わせてコミュニケーションが取れれば同じだなと思えるようになりました」

現在はオンライン指導に加えてパーソナルジム経営、区民向けの運動指導など日々忙しく、「平均睡眠時間は3~4時間くらい」と苦笑しつつも「毎日充実しています」と胸を張るぽん太さん。

「身体を変えると心も変わり、人生が楽しくなる」

いろんな壁を乗り越えてきたぽん太さんが、たどり着いた想い。その想いは確実に人々に届き始めています。

取材・文:仲奈々
撮影:飯本貴子


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