美容部員から占い師へ。“不安に寄り添う”技術が拓いた第二のキャリア #わたしのスキル解放記
自分が当たり前のようにやってきたことが、別の誰かから見ると大きな価値になることがあります。
「#わたしのスキル解放記」では、自身の持つスキルに気づき、それをバネに人生の次のステージへとジャンプした人々の物語を紹介していきます。
今回お話を伺ったのは、占い師として活動しているJESSICA Ray（以下、JESSICA）さん。
もともとは美容部員として、店舗経営も任されていたというJESSICAさん。美容部員から占い師という異色のキャリアチェンジをしましたが、一見まったく異なる業界にそれぞれ身をおいたからこそ、「何事においても大切なことは変わらない」と気づけたのだそうです。
やりがいもあって、同僚にも恵まれた美容部員時代。でも……
JESSICAさんは主にオンラインで占いサービスを提供し、「自分でも気づかなかった意識に気づける」「寄り添って話を聞いてもらい毎回涙が出る」など口コミでも高評価を集める人気占い師です。
しかし元々占いに関心を持っていたわけではなく、社会人になって最初の仕事に選んだのは美容業界。エステティシャンや美容部員としてお客様の心に寄り添う仕事に、「一生この仕事を続けたい」と思うほどやりがいを感じていたといいます。
お客様と一対一でお話しながら、悩みに寄り添ったり、知識を提案したりするのがとても楽しかったんです。美容の相談はもちろん、世間話や時にはプライベートの悩みを打ち明けてくれるお客様もいました。それが本当に嬉しくって！誰かから頼られると燃えるタイプなんです（笑）
美容業界で10年ほど働き、責任者として店舗や従業員の管理も任されるように。
やりがいのある仕事をし、きちんと評価も得られている。しかし、それと同時にJESSICAさんの心の中には“モヤモヤ”がうごめいていました。
「占いは怪しい」と思っていた
長い間、部下の育成方法に悩んでいたんです。私は一人ひとりにあった方法で指導をしたい。でも、会社の方針はそうではなかった。時間や人数も限られているから、仕方のない部分ではあるんですけどね。上に行けば行くほど、私が目指したい方向性と、会社の目指す方向性にギャップを感じてしまって、モヤモヤが募っていったんです。
そのモヤモヤの解消方法として利用したのが、「占い」。
立場上、会社の人には相談できない。だからといって友人やカウンセラーに相談しても、『上司と話し合いましょう』など、本に書いてあるようなマニュアル通りのアドバイスで終わりそうだなと思って。そんなときにスマホを見ていたら、『電話占い10分無料』って広告を目にして。無料なら一度試してみようかな？と思ったのが、最初のきっかけですね。
占い師の仕事に就くほどだから、昔から占いが大好きだったと思いきや、きっかけはたまたま目にした広告。さらに、占いへのイメージはもともと“怪しい”“一方的”といったネガティブなものでした。
それまで占いって、“決めつけられる”ものだと思っていたんです。『あなたはこういう人間です』とか『数年後に結婚します』とか、勝手にいろいろ決めつけてきて、『異論は許しません』って言われるようなイメージ。
でも、半信半疑で受けてみたら全然想像と違いました。決めつけのアドバイスではなく、自分の力で一歩を踏み出せるようなヒントを与えてくれたんです。それが目からウロコで！
考え方のヒントを与えるだけ。そのヒントを使うかどうかも、その先の行動も自分次第ーー。占いのそんなスタンスが合っていたというJESSICAさん。そのときから、仕事で悩んだら占いに行って“ヒント”をもらうようになりました。
「あなた、占い師に向いていると思うよ」
ただ、やはり一度生まれた仕事に対するモヤモヤの種は消えず、JESSICAさんは長年務めていた会社を辞める決心をします。
ある日突然「辞めよう！」と思い立ち、職場に辞表を提出。しかしその時点では「占いを仕事にしよう」とは思っておらず、その先の計画は白紙でした。
いざ仕事を辞めたものの、次に何をしたらいいのかはわからない……。退職から数ヶ月ほどは、何をするでもなく自宅に引きこもる日が続きました。
骨を埋めるつもりだった美容業界を引退し、しばらく燃え尽きていました。数ヶ月めいっぱいだらだらしたら、『そろそろ何かしないとまずいな』と思えるようになって（笑）。そのときに、以前占いで『あなた、占い師に向いていると思うよ』と言われたことを思い出したんです。
そこからJESSICAさんは、過去にお世話になった占い師の先生に連絡をとり、「占い師になりたい」と伝えました。その後タロット占いなどのスキルを学び、並行して実践の場でコミュニケーションの取り方などを学んでいきます。
そして、サービス提供の場に選んだのが、スキルシェアサービスの「ココナラ」。占いの先生に勧められたのがきっかけでした。
『ちゃんとお客様に価値を提供できるのか？』という不安を抱いていた私にとって、ワンコインから出品できる『ココナラ』は気負いすぎずに始められるプラットフォームだと感じたんです。
「気負いすぎずに」といっても、軽い気持ちで始めたのではありません。JESSICAさんにとっては、まさに新しい人生のスタート。「このスキルで生きていく」という強い決意を持ってのチャレンジでした。
占い師で生きていくと腹をくくったから、『まずは売上〜〜円を目指そう。そのためには、単価〜〜円で、販売件数は〜〜件必要だな』など、目標は決めていました。成功する保証はありませんでしたが、悩んでいるだけで行動しなかったら、成功する確率は0％ですからね。
相手が話していることは本心なのか？
占いを続けていくうちに気づいたのは、「占いもこれまでの仕事も、本質は同じ」ということでした。
以前、店舗運営をしていたときに、仕事に生かしたくて『7つの習慣』などの有名なビジネス書を購入していました。
そして、占いをお仕事にするときに『引き寄せの法則』『バシャール』といったスピリチュアルに関する書籍も読むようになったのですが……。表現や伝え方は異なるけど、まずは相手に寄り添うことが大事だとか、他人任せじゃなくて自分で選択するとか、言っていることはどれも一緒だなって気がついて。そのときに、点と点が一本の線でつながった気がしたんです。
占いでもビジネスでも、「悩んでいることはなんですか」と聞くだけでは、相手はなかなか本心を語ってくれません。心から寄り添い、共感し、そのうえで提案をしないと、相手の心には響かない。それは、JESSICAさんが美容部員やエステティシャンとして心がけてきたことと同じでした。
占いにいらっしゃるお客さまは、そもそも自分の悩みを具体的に自覚していない方も多いんです。それは美容の世界でも同じ。だからまずは、質問力と傾聴力をフル稼働して、相手に敬意を払い、相手に興味を持って話を聞くことを心がけました。言葉そのものだけを聴く以上に、言葉以外に込められているイメージやニュアンスを想像しようとする姿勢が大前提なんです。
相手が今話していることは本心なのか。本当に話したいこと、相談したいことは別にあるんじゃないか。信頼してもらうために、どんな話をしたらいいのか。
本を読んだり、感じたことや学んだことをメモしたり、相手の言葉や声色とその裏にある心理を伺ったりしながら、JESSICAさんは自分の中の引き出しを少しずつ増やしていきました。そうして徐々に、これまでの仕事と新しく飛び込んだ占いの仕事が一本に繋がっていきました。
いろんな悩みや不安が複雑に絡まり合っているように見えるけど、実は答えはシンプルなのかもしれない。そして、それを困っている人に伝えてあげたらいいんじゃないか。私がそれに気づけたのは、占い師だけでなく、会社員の経験もあったからです。
占いに頼らずとも、自分のことは自分で決めていけるのが理想
占い師をはじめてから約6年。ココナラでの販売実績は9000件を超え、リピーターも多数。評価は最高の5.0をキープし続けています。
ありがたいことに、『寄り添って話を聞いてもらえた』という口コミをよくいただいています。これこそがご支持いただいている理由かな、と。
でも、私は別に、仕事のために勉強しようとか、スキルを身に着けようとは思っていなくて。ただ、目の前のお客様の役に立てるようになりたいな、と思ってやっていたことが、いつの間にか私のスキルとなって、仕事が変わった今も生き続けているんです。
美容部員と占い師。一見まったく異なる仕事のようだけど、大切なことは一緒だった。知識やスキルだけじゃなく、経験も。これまでいろんなところに打ち続けてきた“点”は、どれも無駄にはならない。いつか、一本の線でつながるときが来る。
JESSICAさん自身がそのことを実感しているから、「遠回りしているんじゃないか」「理想にたどり着けないんじゃないか」と不安な人に心から寄り添い、一人ひとりに合ったヒントを差し出すことができているのかもしれません。
最後に、JESSICAさんが考える「占いとの付き合い方」を聞いてみました。
正直に言うと、自分で自分のことを決断できる人には占いは必要ないんです。自己決断力が持てれば、自分の中にある確固たる軸をもとに、自分なりの結論を出せますから。
ですが、すべての人がそうでなければならないということでもありません。少し迷ってしまっている人は、いつでもご相談ください。
私の考える占いとは、より良い人生を送りたい、今の自分を変えたいと願う気持ちに対し『考えるヒント』を差し上げ、新しい自分を創るためのお手伝いをするもの。あなたの将来を決めることはできませんが、どんな選択肢があるのか、そしてどんな考え方をしたらいいのか、決断に必要なヒントを差し上げることはできます。
自分はどうしたいのか？どうすればよいのか？を、自分に真剣に向き合い考えることで、人生がより豊かになる。私を頼ってきてくださった方々には、そういった経験をしてほしいなと思っています
取材・執筆：仲奈々