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料理の道で挫折して、僕はゲームライターという天職に出会えた #わたしのスキル解放記

自分が当たり前のようにやってきたことが、別の誰かから見ると大きな価値になることがあります。

「#わたしのスキル解放記」では、自身の持つスキルに気づき、それをバネに人生の次のステージへとジャンプした人々の物語を紹介していきます。

今回お話を伺ったのは、ゲーム記事特化ライターとして活動しているkenblogさん。幼いときから一日中ゲームのことを考えているほどのゲームフリークだったものの、学校を卒業後は料理の道へ。

ふたたびゲーム一色の世界へ戻ってくるまでには、職場での軋轢やブログの長い低迷期など、数々の困難がありました。

ゲームが大好きな人の気持ちが手に取るようにわかる

ゲーム記事特化ライターとして活動中のkenblogさん。スマホゲームを中心に「読んだ人がプレイしたくなるようなわくわくするゲーム紹介記事」を得意としています。

「記事執筆のご依頼は、最近はほとんどが紹介経由。ありがたいことに、クライアントさんが『kenblogってライターに頼めばいい記事を書いてくれるよ』と口コミを広めてくださっているようなんです」

一方で、依頼が殺到するとこれまでのように発注できなくなる可能性から「他の人には教えたくないライター」と評されることもあります。

ゲーム初心者にはわかりやすく、上級者にはモチベーションをくすぐる記事を。ターゲットを問わず、ゲームというフィールドの中で幅広く人の心を掴める理由は「とにかくゲームが好きだから」。

「小さいときからずっと、朝から晩までゲームのことを考えていました。なんなら夢の中でもゲームをしているくらい(笑)。ゲームが好きな人の気持ちがよく分かるし、そういう人たちがどんな記事を読みたいか、どんな情報を求めているかが手に取るように分かるんです」

小学1年生、『スーパーマリオ』の衝撃

kenblogさんが初めてゲームに触れたのは小学校1年生のとき。友達の家にあったファミコンで『スーパーマリオブラザーズ』をプレイしたときの感動は今でも忘れられません。

「それまでは友達と遊ぶといったらサッカーか野球でしたから、ファミコンのおもしろさはすごく新鮮で衝撃的でしたね。もう一気にその魅力に取り憑かれてしまって。僕の家にはゲームがなかったから、毎日のようにファミコンのある友達の家に遊びに行っていました(笑)

小学校中学年の頃、ようやく親にスーパーファミコンを買ってもらって。でも裕福な家じゃなかったのでソフトをたくさん買ってもらえるわけでもなく、やったことのないゲームの雑誌や攻略本を見て、“やっている想像”をするのも大好きでしたね。ゲームをしている時間と、ゲームに関する文章を読んでいる時間がとにかく幸せでした」

中学生、高校生になってもゲーム熱が冷めることはなかったものの、まだ「ゲームを仕事にする」の選択肢が少ない時代。そもそも「ゲームを仕事にできないか」と考えることすらなく就職を迎えることになります。

「今の自分が学生に戻ったら、プロゲーマーになりたいと思っていたかもしれません。でも、その頃はまだそんな職業はありませんでしたから。

当時、ゲームを仕事にするとなると、ゲーム会社に入社するのが一般的。でも、僕はゲームを作りたいのではなくて、ゲームをプレイするのが好きだったんですよね。学生時代から漠然と『ゲームをプレイする側で稼げないか』と夢見ていましたが、それが叶う時代じゃなかったんです」

どの職場も続かなかった料理人時代

そうして卒業後にkenblogさんが選んだのは、意外にも“料理”の道。

「ゲームと同じくらい食べることや料理をすることが好きだったので、学校を卒業後は料理の道に進みました。料理長も務めるようになり、傍目には順調なキャリアを歩んでいたかもしれませんね。でも、どの職場も長く続けられなくて……」

職場環境をもっと良くしていきたい。もっとお客さまに喜んでほしい。そんな思いに溢れていたkenblogさんは、立場や役職に関係なく、積極的に自身の考えを発信するタイプでした。

「そういう人って、上の人からすると疎ましいんですよね。当てつけのように家からめちゃくちゃ遠くの店に飛ばされたこともありました」

組織に所属していると、納得できないまま手を動かさないといけない場面も出てきます。「発言力を身につければ提案が通りやすくなるかも」と思い料理長まで上り詰めるも、取り巻く環境は変わらず……。

「一社員の僕がどんなに真剣に料理のことを考えても、トップの一存ですべてが決まってしまう。もちろんすべての職場がそうではありませんが、そんな環境に疲れてしまって、料理の世界から身を引くことにしたんです」

「やりもしないで、失敗するって決めつけるのはどうなんだろう」

次は、自分がいいと思うものを突き詰められる仕事がしたい。そんな思いから、退職後は会社員ではなく独立することを選択します。そこで「とりあえずやってみよう」と選択したのが、ブログ運用。生活のために貯金を切り崩すことになるので、初期投資が少ないという理由もあり選択したものの……。

「長年飲食店務め且つ食べるのが大好きで太っていたから(笑)、自分でブログを立ち上げてダイエット記事を書いていました。また転職経験も多かったので、転職関連の記事を書くことも多かったですね。でも、びっくりするほど読まれなかったんですよ」

どんなジャンル、どんな記事が読まれるのかを試行錯誤しながら研究する日々は、1年以上続きました。そんな中、今につながる決断の芽となったのはパートナーからの一言でした。

「ある日、悩んでいる僕を身近で見ていた妻から『なんでゲームの記事を書かないの?』と言われてハッとしました。それまで、ゲームを仕事に結びつけるって発想がなかったんですよ。今思うと、大好きなことだからこそ、仕事と分けて考えたかったのかもしれません。なにせ、一度大好きな料理を仕事にして失敗しているので……」

好きなことを仕事にして失敗したくない。心の奥底に抱いていた不安を、初めて自覚した瞬間でした。

「でも、やりもしないで失敗すると決めつけるのはどうなんだろうって。もし失敗しても今の自分なら失うものはないんだから、やれることはとにかくやってみようかと思えたんです」

それまで研究してきたSEO(検索エンジン最適化)の知識や記事の書き方をすべて動員して、当時好きだった『ロマンシング サ・ガ3』『テリワンレトロ(ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランドRETRO)』といったゲームの攻略記事を書き始めたところ、全く読まれなかった頃が嘘のように、3ヶ月目で記事が“バズ”るのを経験。ゲーム特化ブログを初めてから1年後には、月間PV数40万を超える人気ブログに成長しました。

「僕のブログって、情報がいちいち詳しすぎるんですよ(笑)たとえばRPGゲームだと、他の人が一文で終わらせるような武器一つの紹介で『どこで使えるのか』『どんなふうに使うのか』をひたすら長く書くんです。そういうところで他のブログと差別化できたのがよかったのかなと思います」

ココナラを使い始めて3ヶ月。口コミが評判を呼び稼いだ金額は……

ブログの“バズ”を経て自分の強みはゲームにあると確信したkenblogさんは、ゲーム記事を仕事として成り立たせるため、活動の拠点をクラウドソーシングにも広げていきます。しかし、クラウドソーシングはブログとは異なり、クライアントからの依頼がないと仕事がスタートしません。そのやり方の違いには戸惑いもありました。

「ブログでの実績を引っさげて、大手のクラウドソーシングを利用して『ゲームレビュー記事を代行して書きます』と営業をかけました。でも、思ったように受注できなくて。そもそも、“ゲーム記事”自体の仕事量が多くないんですよね。なので、まずはとにかく窓口を増やそうと『ココナラ』を始めたんです」

「とにかく営業の場を広げたい」とスタートしたココナラですが、結果的に「ココナラとの相性がすごくよかった」ことが、ゲームライターとしての飛躍につながります。

「検索で1位を獲得した『放置少女』の記事とか、数万PVを稼いだ『テリワンレトロ』の記事とか、これまでのブログの実績を全部ポートフォリオにして提示したところ、すぐに依頼が入るようになったんです。口コミが口コミを呼んで依頼がどんどん来るようになって。使い始めてから3ヶ月目には、ココナラだけで月20万円ほど稼げるようになりました」

クライアントワークの実績がほとんどなかったkenblogさんにとって、ブログの実績で勝負できるココナラのスタイルが“カチッ”とはまった瞬間でした。

「ブログが伸びずに苦しい思いをした経験も役に立ってるんです。僕に仕事を依頼してくれるのは、ほとんどが同業のブロガーさん。閲覧数が伸びない、売上が発生しないといった彼らの悩みは、僕もかつて経験し乗り越えてきたものです。経験をもとにクライアントに寄り添った解決策を提案できるのが、自分の強みだと思っています」

毎日書き続けていて、嫌になることはないですか?

現在、kenblogさんはブログとココナラを軸に活動をしています。ライターを始めて3年が経った今でも、書き続ける理由は変わらず「ゲームが大好きだから」。

「ずいぶん遠回りはしましたけど、昔夢見た“ゲームをプレイして稼ぐ”仕事にかなり近いことができているんじゃないかなと思います。学生時代に漠然と抱いていた夢を、まさか大人になってから実現できるなんて……。それを叶えてくれたのが、ブログとココナラでした」

いくら好きなこととは言え、毎日記事を書き続けていたら嫌になってしまうこともあるのでは……。

「僕、どんなゲームでも楽しめちゃうんですよね。いわゆる“クソゲー”と言われているゲームだろうが、5人でやることが推奨されているゲームを一人で攻略するための解説を任されたときであろうが(笑)、おもしろいって思えるんです」

一日中、寝るときですらゲームのことを考えていて、その脳内を言語化しているだけ。時間を忘れてプレイしていた子どもの頃と、やっていることは何も変わらない。kenblogさんは、今の仕事についてそう語ります。

かつてkenblogさんが読んで心を踊らせていたゲーム雑誌や攻略本も、きっと当時の大人たちが同じような気持ちで書いていたもの。今「書く側」としてその情熱を引き継いだkenblogさんの記事を読み、かつての彼のようにゲームの世界を夢見る子どもが、今この瞬間、日本のどこかに誕生しているかもしれません。