「人的資本リーダーズ2022」を受賞したココナラの人事戦略・人的資本経営方針、具体的な取組みとは!?
このたびココナラは、「人的資本調査2022」(企画:一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム、HR総研、MS&ADインターリスク総研株式会社)において、優れた人的資本経営・情報開示に取り組むリーダー企業として「人的資本リーダーズ2022」を受賞しました!(280社中、10社がリーダーズとして受賞)
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今回は、ココナラが人的資本についてどう考え、どのように戦略を立てていったのかを、具体的な取り組みにも言及しつつご紹介いたします!
まずは自己紹介から
ーそれでは、最初に自己紹介からお願いします!
佐藤)CHRO佐藤です。入社前はリクルートで社長直下の特命係みたいなことをやっていて、新規事業開発や営業支援、組織風土改革など、会社の重要課題の中で遊軍にしかできないテーマを色々やっていました。2020年5月にココナラにジョインしたのですが、最初はビジネス利用に特化した「ココナラビジネス」の立ち上げ準備を行いました。その後、自ら手を上げHRへ移り、今に至ります。
最近の休日は子供の勉強を見たり、バスケ部の引率やコーチをしていると一瞬で終わる(笑)。休日の夜はワイン片手に名探偵コナンを観ています!
二瓶)二瓶です。金融機関や医療系のベンチャーを経て、2022年6月にココナラに入社しました。人事ポリシーに紐づく施策や人事企画業務、評価制度設計や組織開発などに携わっています。
趣味はSF小説を読むこととドキュメンタリーを観ることです!
「人的資本リーダーズ2022」受賞について
ーそれでは改めて、「人的資本調査2022」および、今回の「人的資本リーダーズ2022」受賞について教えてください。
二瓶)かつては、人への投資=人件費やコストとして捉えられることも多くありました。しかし、企業で働く人材を価値を生み出す源泉=「資本」として捉える考え方が徐々に広がり、2023年3月期決算以降、上場企業には人的資本に関する開示が義務づけられました。
そんな中で、人的資本経営や情報開示の後押しをするために実施されたのが「人的資本調査」です。2022年度は280社が調査にエントリーし、そのうちココナラを含む10社が、特に優れた人的資本経営及び情報開示の取組みを行っているとして、リーダー企業に選ばれました!
ーうれしいですね!ちなみにエントリーしたのはどのような会社が多いのでしょうか?
二瓶)従業員が1000人以上という規模の大手企業が多いですね。グロース市場で選ばれたのはココナラだけです。
データの一元化など、他社に比べて進んでいる取り組みが多かったことや、人事戦略と経営戦略を結びつけ、施策に落とし込んでいる点を評価していただきました。
人的資本開示の必要性とは?
ーなるほど。そもそもなのですが、なぜ人的資本の開示が大事なのでしょうか?
佐藤)僕は2019年、トヨタが終身雇用を保証できないと発信したのが契機だと思っています。国や会社がレールを敷いて人を育成し、その代わり会社に尽くしてねという今までのやり方ではなく、"これからは個人で自立し、成長してくれ"といきなり梯子を外したというか…。
企業も人も変わっていくことを社会から求められているし、変えていかざるを得ない状況にあるのが今なんです。
二瓶)そうなると、個人も働き方や働く企業を自ら選ぶ意志が必要。今まで人事制度は開示されないことも多かったのですが、今後は従業員に対してはもちろん、投資家や採用候補者も含め、広く発信する必要があります。
一方、従業員も企業から言われたことをやるだけではなく、自分はこういうことをやりたい、こういう風に働きたいと、積極的に対話することが大事だと思います。
そのために、企業は情報を開示し、選び選ばれる関係になっていかなくてはいけません。
佐藤)企業が情報を開示していれば、個人は働く会社を選びやすくなるし、自分がそこで何をしたいか、何ができるかも言いやすくなります。
二瓶)働く人のモチベーションやキャリアはさまざまですし、会社もさまざま。だからこそ、選び選ばれるためには「こういう会社です」と情報をオープンにして、関心を持ってもらうことがこれからは必要だと思います。
ビジョン・ミッションから自然と行き着いた、ココナラの人的資本経営
ーこれからの時代、人的資本の開示は必然だということが分かりました。では、ココナラはその人的資本開示をどのように考えたのでしょうか?
二瓶)女性管理職の割合や産休取得率などを数値で開示するのがスタンダードですが、ココナラは数値の背景にある考え方も一緒に説明するようにしています。
他社との比較ができるので数値も大切なのですが、「なぜこの数値なのか?」を含めた開示をしたいと考えています。
ーたしかに、数値の背景まで分かるとより理解度が深まりますね。人的資本開示の義務化方針が発表されたのは2022年11月ですが、ココナラはいつから人的資本について考えていたのですか?
佐藤)人的資本経営という言葉はまだあまり聞かなかった時期ですが、2021年の秋くらいからさまざまな情報を一元化して、データによる示唆を踏まえた意思決定や、社員の成長支援ができる会社にすることを人事戦略の根幹にしたいと思っていました。
そもそも、ココナラは“一人ひとりが「自分のストーリー」を生きていく世の中をつくる”をビジョンに掲げており、それは社員に対しても当然当てはまります。組織の力を更に高めていくためにも、個人と会社のあり方を改めて考えるタイミングにきたな、と。
少しずつ取り組み始めていたので、人的資本の開示義務化はココナラの人的資本経営を推し進める良い機会になりましたね。
ーなるほど。具体的にはどのように取り組んだのですか?
佐藤)事業成長が大前提ではあるので、中長期の経営戦略に合わせて人事戦略はどのように考えていくかを経営陣と議論し、As Is(現状の課題)とTo Be(理想の状態)をまとめるところから始めました。現状の課題を洗い出してカテゴリごとに整理、優先順位を決めていきました。今は顕在化していないけれど、事業成長を目指す中で今後出てくるであろう課題についても考えています。
また、コロナ禍において広まったリモートワークなどは想像しやすいかと思いますが、人事施策は会社によって様々なあり方が存在します。その意味において「こういう考えだからこのようにしています」と説明可能にするための、根幹になるものがないといけないと考え、まずは人事ポリシーを策定することになりました。
それがこちらです。
個人のWillと会社のミッションの関係を示す、人事ポリシーの策定
二瓶)一人ひとりの中長期的なありたい姿=Willは大事だと考えていますが、未だない市場を作っていくには、トップダウンで進めなければいけないこともあります。
個人との対話なしにミッションを押し付ければ、個人のWillは大事にされていないと感じますよね。一方、それぞれのWill全てを実現しようとすると、会社の戦略から逸れてしまう可能性もあるし、ユーザーのためにならないかもしれません。
だから、会社と個人のあり方を定義するための人事ポリシーが必要なんです。
佐藤)人事ポリシーは人的資本経営のキモにもなるんです。会社と個人を対等と明示するか否かで、前述の通り説明の仕方が変わるので、社員の納得感はだいぶ変わるだろうと考えています。一方、会社側は正直、腹を括らないと「対等にしたい」とは言えない。言ったからには社員への積極的な情報開示はもちろん、対話も必要になるためです。
ココナラでは対等でありたいと明示し、様々な人事制度、施策の実践方法に関してはみんなでより良いものを作っていきたいと考えています。
ーWillとミッションを重ね合わせるのは大変だと思うのですが、どのようにしていくのでしょう?
二瓶)期初に組織長がミッションを説明し、個人はWillを明示して対話を重ねます。ミッションとWillがイコールになるとは限らないけれど、お互いに納得感を持って進んでいくためにはコミュニケーションが不可欠。個人でやりたいことがあっても表明するタイミングがないとモヤモヤするかもしれませんが、仕組みとして上長にWillを話す機会があれば、否が応でも対話が生まれます。人事ポリシーがあることで、上長がそれぞれのWillに対してどうコミュニケーションをとるかの整合性も取れると考えています。
加えて、個人と会社は双方向の関係だよ、ということを普段から発信するのも大切ですね。
人事ポリシーを軸にした、人事施策
ー人事ポリシーに立ち返ることで、さまざまな場面においてもブレがなくなりそうですね。では、ここからは具体的な人事戦略についてお伺いします。人事ポリシーをもとにどのような施策を考えているのでしょうか?
佐藤)5つの施策を策定した中でも、今回は働く個人に関連性が高い3つ、03~05をご紹介します。
TRMによる成長機会への投資
佐藤)成長支援という意味では、これまでも部署異動やスキルアップの希望については個別に機会提供をしていました。一方で、属人的だったこともあり、ご自身のWillはあるけれど、どうしたらそのような機会を得ることができるのか?については仕組み化ができていなかったのです。そのため、
・どのような時に、どのような条件のもと手を挙げてチャレンジができるのか
・どのようなスキルを、どのような方法で獲得することができるのか
を仕組み化していきたいと考えています。その方が対等だし、社員の中でもビジョン・ミッションの実現に向けて、もっと頑張りたいと思う人が増えると思うんです。会社としては社員がWillを起点にチャレンジし、パフォーマンスが上がることで事業成長に繋がる。社員は自身のスキルや経験の向上機会を得られると共に、パフォーマンス向上は評価として返ってくる。対等であり、win-winですよね。
やりたいのは「育成」ではなく、「成長支援」。育成は育てる側が正解を知っている前提ですが、そのような世の中ではなくなっています。ココナラでは、それぞれのWillを起点とした成長を支援していきたいと考えています。
仕組み化は早めに実現したいと考えていますが、始めてからもトライアンドエラーを繰り返すでしょうね。
二瓶)これも双方向なんですよね。こちらから完璧なシステムを提示するというよりは、皆さんの意見を聞いて良くしていきたいです。
ただ、人事ポリシーにもあるように“会社のビジョン・ミッションと個⼈のWillを重ねながら、 オーナーシップをもって⾏動する個⼈”への成長支援。支援の前提には、Willとミッションを重ね合わせる作業が不可欠ですね。
バリュー体現を土台としたパフォーマンスマネジメント
二瓶)ココナラではバリューを”ミッションを実現するために大切にする価値観やスタンス”と置き、3つのバリューと9つのスタンスを定めています。
組織の規模が急激に拡大し、事業も多角化するなか、ミッションの実現を一緒に目指していくため、それぞれがいかにバリューを体現していくかにもフォーカスしています。
そこで、人事評価においてミッションに対する成果とバリューに対する行動を50:50で評価。これは非常にユニークではないかと思います。
具体的には、半期毎に各人がミッションに対するプロセスや成果だけでなく、”バリューを体現できたのか?どう体現できたのか?”についても振り返り、上長に共有します。それを上長が評価し、組織長や経営陣が集まる会議でプレゼン。最終的に組織長が横軸で評価します。卓越したバリューを体現できていた方は表彰もしています。
一方、プロダクト開発の現場においてどのような行動を取ると、“バリューを体現している”ことになるのか?は少し曖昧だったんです。評価対象でもあるだけに、そこが暗黙知だとモヤモヤしますよね。
そこで、バリューを開発現場で日々実践できる行動指針に落とし込んだのが「Project Core Value(PCV)」です。
バリュー発揮のために何をすれば良いかが明確になり、ここでも会社と個人の対等に近づいたと思います。
ちなみに、このPCVはトップダウンで実施するのではなく、社員起点で周知や実践のための取り組みを企画しています!
▼「Project Core Value(PCV)」についての記事はこちら
柔軟性・⽣産性を両⽴させる働き⽅
佐藤)まさにここは数値の背景含め、きちんと説明したい部分です。例えばココナラではチームごとに週2日の出社日を設けていますが、ちゃんと理由があります。世の中的にも、コロナ禍を契機に個人の働き方の柔軟性が高まりましたが、一方でチームの生産性も追い求めていかないと、結果的にその柔軟性は失われると考えてきました。チームで気持ちよく働きたい、働きがいを得たいと思うならコミュニケーションはおざなりにできません。だからこそ、出社とリモートのハイブリッド型なんです。
とはいえ、育児休業後や介護を要する同居家族がいる場合などは、一時的なフルリモート勤務や、柔軟な勤務時間設定など、働き方のダイバーシティは大事にしていきたいと考えており、個別事情への対応は柔軟にやっています。
副業に関しては、社外の知見を得られる良い機会ですよね。誰もやったことのないテーマに常に向き合っている会社なので、目の前の仕事をしているだけでは自身の知見がキャップになってしまいますから。ココナラに出品をしている社員も多いのですが、実際に利用してみて改善点に気づき、スピーディーに改善に対応した話をよく聞きます。副業者のうち44.1%がココナラで出品したことがあるというのも、ココナラらしいなと思います。
今後の展望・改善点
ー最後に、これらの施策を展開することで今後目指していきたいことを教えてください。
佐藤)これらの施策のモニタリングは、基本的にはエンゲージメントサーベイの結果を指標としています。
現在、会社全体のエンゲージメントスコアは良い方だと思うのですが、今後事業を多角化していくとなるとスコアの維持が難しくなるかもしれません。だからこそ、意思を込めてエンゲージメントサーベイの良好組織割合100%をKPIとしています。
ーこれまではスキルマーケット「ココナラ」を主力事業としてプロダクトの拡張を中心に取り組んできました。IRでも発表している通り、今後の事業方針として新しいマッチング手法へのチャレンジをしていくことになると思います。
2023年1月に立ち上げた新規事業「ココナラエージェント」をはじめ、今後の事業多角化の方針はスコアに関係するのですか?
佐藤)今の体制で新規事業の立ち上げをやるとなったら、兼務したり新規事業へ異動するメンバーが出てくるため、一時的に会社全体の生産性は落ちるはずなんです。空いた穴を埋めるべく、残ったメンバーに負荷がかかるような影響も想定されます。もちろん計画的な採用をやっていくとしても、全てがうまくいくとは限らないので。
ー確かに。そんななか、エンゲージメントサーベイスコアを100%で追っていくのはチャレンジングなのでは…?
佐藤)そうですね。このKPIは開示もしているので、強い決意を込めています。
二瓶)エンゲージメントサーベイの結果は、部署毎に組織長からメンバーにFBされます。組織別に見ると多少スコアのばらつきもあるので、必要に応じて振り返りの場に人事が同席することもあります。私たち人事はマクロで全体を捉えつつ、現場で何が起こっているのか、ミクロで把握することも大事だと考えています。
ー2023年4月、「人事戦略・人的資本経営方針」を初めて公表した訳ですが、このことにより何か変わることもあるのでしょうか?
二瓶)公表した「人事戦略・人的資本経営方針」の中には既にやってきたこともあれば、これから取り組みを始めるものもありますが、引き続き経営陣と人事、各組織のメンバーで対話を重ね、施策をブラッシュアップしていきたいですね。
今回決めた人事ポリシーもずっと同じであることにこだわるのではなく、常に経営や組織で起こっていることをキャッチし、柔軟に変化していきたいです。
佐藤)実現したいことはそう簡単に変わらないけれど、そのために何をするかは都度変わっていくはずです。会社と個人、お互いを高め合える良い関係性を築きながら、ココナラのビジョン・ミッションに向けてワンチームで頑張っていけたらと思います。