「自分の夢も、子育ても諦めたくない」事務職からプロライター/小説家に転身の理由とは #わたしのスキル解放記
自分が当たり前のようにやってきたことが、別の誰かから見ると大きな価値になることがあります。
「#わたしのスキル解放記」では、自身の持つスキルに気づき、それをバネに人生の次のステージへとジャンプした人々の物語を紹介していきます。
今回お話を聞いたのは、未経験から始め、現在は依頼の絶えないプロライターとして活躍する近藤じゅんこ(旧名juju)さん。子どもの頃から書く仕事に憧れを持ちながらも、「私にはできない」と諦めて営業事務の仕事をしていた近藤さんがふたたび夢に向き合ったきっかけとは——。
“書くこと”を仕事にできるのは、特別な才能に恵まれた人だけだと思っていた
昔から時間があれば本を読んでいたという近藤さん。幼い頃に特にハマったのは、主人公が旅をしながら小説を書いて生計を立てるファンタジー小説。そんな近藤さんが“書く仕事”に憧れを持つのは、ごく自然なことでした。しかし、学校を卒業後は書くこととはあまり関係のない、営業事務として働き始めたと言います。
憧れを胸のうちにしまいつつ、しばらくは営業事務として働き続けた近藤さんでしたが、結婚のタイミングで転機が訪れます。
不妊治療と仕事の両立のしづらさは今の社会が抱える課題でもあり、近藤さんも治療のために職場を離れざるをえませんでした。
退職をすれば病院には通いやすくなる。しかし、妊活にも出産・育児にもお金はかかるから、何かしら仕事は続けたいーー。時間の融通が効き、自宅でできる仕事を考えたとき、真っ先に思い浮かんだのが“書く仕事”でした。
そうして細々と書く仕事をしながら不妊治療を続け、近藤さんはめでたく2人の子どもに恵まれました。不妊治療で多額のお金を使ったため、二人目出産後は貯金がほとんど残っていなかったと振り返ります。
できるかできないかじゃない。やりたいことがあるなら、まずはやってみる
アルバイト感覚で続けてはきたものの、最終的には特別な人しか就けない仕事だと思い込んでいた“書く仕事”。その仕事で生計を立てる、つまり「プロになる」覚悟を、なぜ近藤さんは持つことができたのでしょうか。
本が大好きな近藤さんは、言葉が人に与える力を知っていました。これまで言葉に何度も背中を押された経験があったから、「言葉を通じて、誰かの役に立ちたい」という思いが人一倍強かったのかもしれません。そして近藤さんは、自分で物語を創作をする“作家”から、クライアントから依頼された文章を書く“ライター”に軸足を移すことになります。
近藤さんはライターとして活動の幅を広げるため、当時まだサービスが開始して間もなかった『ココナラ』に登録します。現在は登録者数が314万人(2022年8月時点)いるココナラですが、近藤さんが登録した2012年頃はココナラがスタートした年。まだ1万人ほどしか利用者がいなかったそうです。
しかし、ライター業が完全未経験だった近藤さんは、仕事が軌道に乗るまでは苦労も多かったんだとか。
近藤さんの文字単価は現在4〜5円。初心者からスタートして約10年の間に、どのように単価をあげていったのでしょうか。
それから近藤さんは、動画や書籍、ネット上でライティングに関することを見つけては片っ端から目を通していきました。
背中を押してくれるのは、クライアントからのメッセージ
完全初心者から始めつつも、着実にスキルや知識を身に着けていった近藤さん。現在はココナラに登録するライターの中でも高単価ながら、依頼は途切れるどころか増えていく一方です。
しかし、そんな近藤さんも単価をあげるのはいつも不安だったと振り返ります。
ココナラでは、クライアントが仕事の評価を5段階でつけるシステムがあり、その際、数字のみではなくお礼のコメントを送る文化が浸透しています。
実際に、単価があがるたびに仕事の“質”が変わってきたそうです。始めたばかりのころは、「指示に従って記事を書いてください」という依頼が多かったのが、今では「集客のためにはどんなコンテンツが必要か。そこから一緒に考えてほしい」という相談がほとんど。
近藤さんは、プロ認定(※)を受けた今でも、よりよい記事を届けるために学び続けていると言います。この姿にこそ、10年以上ライターとして活躍し続ける秘訣があるのかもしれません。
生涯ライターとして生きていくために、まだまだ学び続けたい。そう語る近藤さんの顔は、少し照れくさそうながらも輝いて見えました。
※PRO認定制度。ココナラ内外を問わず特定分野の「プロフェッショナル」として活躍する方々を「PRO」として認定し、主にビジネスシーンで利用する方とのマッチングを促進するココナラのシステム。
チャレンジしたことで、子育ての時間も、昔からの夢も叶った
“特別な人にしかなれない”と一度は諦めたものの、会社をやめたのをきっかけに一歩踏み出すことにした“書く仕事”。本格的にライターを始めてから約10年、近藤さんは現在の働き方をどう感じているのでしょうか。
近藤さんは幼い頃、お母さんがずっと家にいたことがとても嬉しかったんだそう。だから自分も親になったら、子どもたちが幼い間は朝から晩まで一緒にいたかったと語ります。
「行くかどうかは子ども次第ですけどね」と前置きしつつ、このままライターの仕事を続けていれば、不妊治療で一度は貯金ゼロになった家計でも、大学進学費用を用意できそうだとお話してくれました。
ライターを始めた当初の「書く仕事で生計を立てる」という目標は、今、近藤さんにとって一番いい形で叶っていると言えそうです。さらに、予想外の形で実現できたこともありました。
一度は諦めた、書く仕事。しかし「本気でやる」と腹を括ったことで、近藤さんはライター、そして作家と仕事の幅を広げ、少額だった収入が子どもの大学費用を賄えるほどになるまでの成長を遂げてきました。
ココナラで活動を始めて約10年で、未経験から依頼が絶えないライターに——。書き続け、学び続けることに誠実に向き合ってきたからこそ辿り着けた場所です。
「できるかできないかじゃない。やるかやらないか」
そう言いながら道を切り開いてきた近藤さんの姿に背中を押され、人生の次のステージへとジャンプする人が増えるのではないか。お話を聞きながら、そんな予感がしました。