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オンラインの力で、美容師の働き方改革&サロンの一極集中問題に挑む #わたしのスキル解放記
自分が当たり前のようにやってきたことが、別の誰かから見ると大きな価値になることがあります。
「#わたしのスキル解放記」では、自身の持つスキルに気づき、それをバネに人生の次のステージへとジャンプした人々の物語を紹介していきます。
今回お話を伺ったのは、ココナラで「似合わせの専門家」として活動している美容師のKeiさんです。普段は表参道の美容室でスタイリスト兼マネジメントをしており、ココナラではパーソナルカラー診断(※1)、骨格診断(※2)、顔タイプ診断(※3)を織り混ぜたオンラインの髪型提案メニューを提供。販売実績は300件超え、平均評価は最高の5.0を誇る人気のクリエイターです。
なぜKeiさんは、サロンの仕事と平行して、ココナラでオンライン診断を始めたのでしょうか。
「地方と東京の橋渡しがしたい」と思うに至った道筋を、美容師を志した頃の話までさかのぼり、詳しく伺いました。
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※2 生まれ持った骨格によるスタイルの違い(ストレート/ウェーブ/ナチュラル)から、その人に似合うファッションの素材や形を分析する
※3 顔の輪郭やパーツの特徴やバランスなどから顔タイプを分析し、似合うファッションのテイストや髪型などを導き出す
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偶然見た『TVチャンピオン』に衝撃。美容師を志した日
「小学生のときは、登下校のときに少し道を逸れて小さな冒険をするのが好きな子どもでした」
敷かれたレールの上を歩くのは苦手。安全な道を行くよりもチャレンジをしたい。小さい頃からそんな性格だったと話すKeiさん。
美容師を目指したきっかけを、こう振り返ります。
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「高校生の頃、いろんなジャンルの達人たちが技術を競う『TVチャンピオン』という番組があって。その番組の美容師対決の回をたまたま見たんです。なにげなく見ていたのですが、ハサミ一つでモデルさんの髪型だけでなく雰囲気や表情まで変化していく様子に衝撃を受けて……」
当時Keiさんは静岡県の進学校に通っていました。高校を卒業したら大学に進学するのが“当たり前”とされる世界。その中でKeiさんは、技術で切り開いていく美容師のプロフェッショナリズムに魅了され、美容の専門学校を志すことになります。
「両親からはものすごく反対されましたね。最終的に、『どうしても美容師になりたいなら、東京で一人前になるまでやりきる』ということで許してくれました」
これが自分のなりたい姿なのか? 原点に立ち戻り、新たな挑戦へ
もともと東京に憧れを抱いていたKeiさんは、迷いなく上京し専門学校へ入学。卒業後は、表参道のサロンでアシスタントとして働き始めました。憧れの東京で夢を叶えたKeiさん。しかし、現実は想像以上に厳しいものでした。
「今は少しずつ改善されてきましたが、当時のアシスタントの稼ぎは少なかったんです。『技術を磨きながら働かせてもらっている』という価値観が強く、給料日前は、まともにご飯を食べられない日が続きました」
そんな厳しい環境でも、持ち前のチャレンジ精神でKeiさんは前に進み続けます。お店が閉まった後に練習を重ねて技術を磨き、コンテストに入賞したり、芸能人のカットを指名されるようになったりと、美容師として着実にステップアップしていきました。
「周りからみたら、順調なキャリアに見えたかもしれません。でも、コンテスト入賞などの実績が増えれば増えるほど、『僕がなりたかった美容師って、これなんだっけ?』と考えるようになって。コンテストで技術を競うことや、審査員にウケそうなヘアスタイルを提案して評価をいただくことが、自分が求めていたことなんだっけ……と」
高校生のときにテレビで観て衝撃を受けたのは、審査員の表情や評価じゃない。ハサミ一つで変わっていく自分に驚く、モデルの嬉しそうな表情でした。
「僕は、お客さまに寄り添い理解してあげられる美容師になりたい」
原点に立ち返ったことから、Keiさんの新たな挑戦が始まりました。
パーソナルカラー診断を取り入れたサロンの先駆けに
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「僕の理想は“お客さんに寄り添う美容師”だということは分かりました。じゃあ、どうしたら寄り添えるのか。それを考えたときに、『その人の魅力をきちんと分かって、言語化する力が必要だ』と思ったんです。
長年の経験から、“なんとなく”目の前のお客さんに何が似合うか分かる美容師は多いはず。でも、感覚だけではお客さんには伝わりません。論理立てて具体的に提案できるように、当時流行目前だったパーソナルカラー診断のアドバイザーの資格と、骨格スタイルアドバイザーの資格を取得しました。
それによって『あなたのパーソナルカラーは◯◯なので、ヘアカラーはこれがいいと思う』『骨格的にこんな髪型が似合います』など、ロジカルに似合うスタイルを提案できるようになりました」
今でこそ診断とかけ合わせてヘアスタイルの提案をするサロンは珍しくありませんが、2017年当時、そのメニューを提供しているところはほとんどありませんでした。
パーソナルカラー診断、骨格診断の大流行にも後押しされ、Keiさんのサロンは注目を集めるように。さらに数年後には、顔タイプ診断をかけ合わせたヘアスタイルの提案を取り入れ、Keiさんの元には“自分に似合う”髪型を求めてたくさんのお客さんが訪れるようになりました。
「ありがたいことに僕だけでは手が回らず、アシスタントを含めた後輩たちも同様の診断ができるように指導することに。そこから、育成やマネジメントにも携わるようになりました。
育成をしていく中で『この営業スタイルなら、アシスタントのときから十分に稼げるようになる』と可能性を感じ始めました。
これまでは、アシスタントが一般的な給与をもらえるようになるにはスタイリストに昇格するしかなく、道半ばで挫折する人も多かった。でも診断でお客さまに指名いただけるようになれば、スタイリストデビュー前から十分な収入を得ることができます。
また診断時はお客さまと一対一で接しますから、その経験は将来スタイリストになったときに必ず役に立つはずです」
「提案通りの髪型にしたら垢抜けた」オンライン診断で感じた新たな可能性
診断もできるスタイリストとして評価を得たKeiさんのもとには、有給休暇を使って遠方から訪れる人も増えていきました。
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「たくさんの美容師がいる中で、僕を選んで来てくれるのはすごく嬉しいです。でも、『わざわざ来てもらって申し訳ないな』『東京以外にも素晴らしい美容師はたくさんいるのにな』という思いもありました。そんなときに、ココナラを特集したテレビ番組を見て、オンライン上で自分のスキルを出品している人がいることを知ったんです」
気になってココナラを覗いてみたところ、多種多様なスキルが出品されていることにKeiさんは驚きました。
ココナラを活用すれば、遠方の方にもオンラインで髪型診断を提供できるかもしれない。そこには、いろんな可能性が秘められていました。
ココナラでサービスを提供し始めたのは、コロナ禍が少し落ち着いてきた2022年。すでにオンラインのパーソナルカラー診断や骨格診断は普及していたため、いわば“後発組”として参戦することになります。
「ココナラでオンライン診断サービスを提供している人はたくさんいましたが、その中に美容師としてキャリアを積み重ねてきた人は少ないように感じました。
僕はパーソナルカラーや骨格を診断するだけでなく、診断結果を元に似合うヘアスタイルの作り方やセットの仕方まで細かく提案できます。診断後は、一人ひとりにカルテを作り、それを元に地元のサロンで似合う髪型をオーダーできる仕組みにしました」
美容師のキャリアを前面に打ち出した“似合わせ”診断。どこのサロンでも似合う髪型をオーダーできるカルテを一人ひとりオリジナルで用意するなどきめ細かなサポートが好評となり、Keiさんはオンラインでも着実にステップアップしていきました。
「オンラインだからこそ、リアルでは言いづらい悩みを相談できる方も多くいらっしゃいます。最初は不安そうにしていた方から、『Keiさんの提案通りの髪型にしたら垢抜けた』『診断を受けてから美容室に行くのが楽しみになった』と評価をいただいたときは、本当に嬉しいですね。
中には、診断後すぐにカルテを持って地元のサロンでカットをしに行ってくれて、数日後に『早速アドバイス通りカットしてきました!』と報告をくださった方もいました」
一方で、オンラインの仕事が増えれば増えるほど、サロンでお客さんと対面するときにはなかった難しさにも直面していきます。
「当たり前ですが、オンライン診断の場合は直接相手の顔や髪を見ることができません。事前に写真を送っていただき診断を行います。写真のクオリティは人によってさまざまなので、どんな依頼をしたら、診断に適した写真を共有していただけるか、今も試行錯誤中です」
最近はAIの画像生成を活用し、似合うヘアスタイルをイメージ写真付きで提案しているといいます。新しい技術も躊躇なく取り入れながら、Keiさんのサービスは日々進化を続けています。
東京だけでなく、地方の美容師業界も変えていきたい
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Keiさんがココナラで活動を始めてもうすぐ2年。10代から50代まで、幅広いお客さんにサービスを提供してきました。
「東京の有名サロンに行きたくてもなかなか気軽に行けない」というお客さま目線のハードルを解消するというメリットはもちろん、オンライン診断によって、美容業界に柔軟な働き方を取り入れられる可能性も感じているといいます。
「リモートワークができないために離職してしまった美容師が、自宅でも仕事を続けられるようになる可能性もあります。オンライン診断のスキルを身につければ、自宅で働くこともできますから」
さらにKeiさんが期待しているのは、地方の美容業界の活性化です。
「地元密着型のサロンは、何十年も同じお客さまを担当することも多く、自分のお客さまの魅力をきちんと分かっているスタイリストが多いんです。
僕のオンライン診断を受けたお客さまは、地元のサロンにカルテを持って行くはず。それを見て『こういう診断はうちでもできるかもしれない』と思ってもらえて、それを実際に取り入れてもらえたら、僕がうまくいったやり方を全国にシェアできることになります。それが地方の美容業界の活性化につながったらうれしいですね。そうすることで、喜ぶお客さまもどんどん増えていくはずですから」
高校生の頃、ハサミ一本で見違えるように生き生きとするモデルの姿を見たときの衝撃。そのとき芽生えた情熱は、今も「誰よりもお客さまに寄り添う美容師でありたい」という気持ちとして変わらずに残っています。
ヘアサロンはただ髪を切るだけでなく、なりたい自分や新しい自分を見つけられる場所。Keiさんをはじめ、オンラインでサロンの新たな可能性を開拓する人たちの力によって、誰もが自分の新たな魅力に出会えて、自身を今よりもっと好きになれる世界が近づいてきています。
取材・文:仲奈々